約20年前、フェラーリは、一部のプロダクションモデルのパフォーマンスを新たな極限へ押し上げた「スペシャル・バージョン」モデルを作り始めました。その多くがマラネッロの伝説に加わっています。同じ頃、フェラーリは「XXプログラム」を始動し、選り抜きの専門的なお客様を対象に、FXX-K EVOなどのステアリングを握って本物のサーキット・テストドライバーになる機会を提供してきましたが、これらは公道走行の承認を得ていないモデルでした。
今回初めて、この二つのプログラムがひとつになり、SF90 XX SPIDERが誕生しました。プログラムの趣旨を生かした初のスペシャル・バージョンであり、公道走行可能なXXといえるモデルです。SF90 XX SPIDERは、ベースとなったSF90 Spiderのリトラクタブル・ハードトップ(RHT)を受け継いでいますが、30 cvの出力アップを果たし、特別に設計されたソフトウェア・ロジックや、固定リアウィングといった斬新な空力ソリューションを採用しています。
SF90 XX SPIDERで、フェラーリ・スタイリング・センターは、リアに加えられた変更を利用して、ひと目でそれと分かるアーキテクチャーを生み出しました。大変人気のあるフェラーリの伝統、リアのフライング・バットレスと、フロントの矢のテーマとをシームレスに調和させたのです。その結果、ボディが前方に伸びて見える視覚効果が生まれ、F173VSとはまったく異なる印象となりました。
車両の重心が下がって見え、特にサイドビューで顕著です。これはルーフ部分の効果だけではありません。ウィンド・スクリーンがラップアラウンド形状で、サイド・ウィンドウとシームレスに溶け込み、フライング・バットレスがF173VSより低いためでもあります。ロールバー同様、ルーフもカーボン・ファイバー製です。フェラーリの名高いリトラクタブル・ハードトップ(RHT)メカニズムによって、車速45 km/hまでは走行中でもわずか14秒で開閉でき、あらゆる天候で車両を存分に楽しんでいただけます。
SF90 XX SPIDERは、SF90 Spiderの特徴であるPHEVレイアウトも受け継いでいます。V8内燃エンジンと3基の電気モーターを組み合わせ、2基のモーターはフロント・アクスルに、1基のモーターはエンジンとギアボックスの間に搭載します。この構成によって、最高出力は1030 cvに達し(SF90 Spiderから30 cv増加)、フェラーリ全体の新たなパフォーマンス・ベンチマークを打ち立てました。また、V8サウンドをいっそう朗々とした豊かなものとするため、内燃エンジンの脈動をキャビンに伝達するホットチューブ・システムも最適化されました。
SF90 XX SPIDERは、フェラーリ史上どのロードカーよりも効率性の高い空力パフォーマンスを誇り、発生ダウンフォースはSF90 Spiderの最大値から倍増しています。最も特徴的な要素は、間違いなくリアの固定ウィングでしょう。サーキット仕様のXXに装着して、徹底的な研究、テスト、開発を行いました。ビークル・ダイナミクスには重要な新機能が二つあります。まずABS “evo”は、さらに高いパフォーマンスを保証し、ドライ路面におけるブレーキ性能の再現性を向上させます。そして初採用となるエクストラ・ブースト・ロジックは、コーナー出口で短いパワーブーストを実現してラップタイムを短縮します。